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通勤している間に何をするか?

通勤に要する時間は年ごとに長くなっている。 もしここに片道八〇分を通勤に要するビジネスマンがいて、三〇年間勤めあげたとしたら、通勤時間の総計は驚くなかれ二万四、〇〇〇時間となる。なんと、三〇年のうちの十分の一を通勤で消費しているのだ。 もしあなたが毎日職場に出勤するとすれば、最大の時間節約法のひとつは、できるだけ職場の近くに住むようにするか、あるいはあなたが住んでいる場所のできるだけ近くに職場をもつことであるが、今日のような住宅事情では、これはすべての人に可能なことではない通勤時間の活用法どうしても通勤に毎日相当の時間をとられざるをえないとすると、問題は、その通勤時間をどう生かすかにかかっている。通勤電車のなかで本や新聞を読むことはたいていの人がやっていることだが、先にあげた小田島弘氏は同じ『ビジネス武芸十八般』という本のなかで、通勤時間の活用法を次のように述べている。

まず、一時間ぐらい出勤時間を早めるとびっくりするくらいすいた電車に乗れるものであるから、電車にすわれる時間を中心に一日のスケジュールを組み替える。つまり夜型人間であることをやめて朝型人間に転換し、朝早く起きる習慣をつけるのである。 さてこのようにして電車にすわれたら、この貴重な通勤時間の利用法をあらかじめ決めておくのである。この時間こそ自分だけが使える時間であり、そこでは思いきり自分の好きなことをする時間に活用したいからである。 

ビジネス中心の人だったら、今日の計画をたてたり、明日の計画、今月の計画などを考える。アイデア開発に興味をもっているならば、カード片手にアイデアや創造性開発を研究するのもよい。読書の好きな人は鉛筆を片手にせっせと本を読み、欄外に感想などを書きとめておく。囲碁や将棋の好きな人だったら、定石集を片手に勉強するのも楽しいであろう。要するに、電車のなかを自分専用の「移動研究室」としてしまうのである。

このように、通勤時間を利用してほかの人にはまねのできない大きな仕事をしている人はたくさんいる。たとえば私の友人で、いまはブリヂストンタイヤのニューヨーク支店長をしている大坪檀氏は、東京の本社に勤めていたころは、毎朝自分の車を運転して神宮前の自宅を七時に出る。早朝は道路がこんでいないので、七時半には会社付近に着く。しかしすぐには車を出ないで、始業の九時近くまで車中にこもっている。ただ時間つぶしをしているのではない。氏の車のなかには、内外の経済書、経営書がいっぱい積みこんである。いわば、車は移動小図書館を兼ねているのである。

また日本能率協会の出版部長をしている後藤弘氏は、経理会計に関する著書を十数冊も著しているが、氏は住居の習志野を出社時間の三時間前に出る。そして一時間ほどかかる電車のなかでゆっくりと読書し、出社してからはだれもいない事務室で、じっくりと原稿を執筆するのだそうである。氏の十数冊の著書や毎月何本と書く雑誌原稿は、すべてこのようにして書かれたものであると語っている。

要するにこういった人たちは、通勤の時間を新聞を読むことだけにつぶさないで、もっと有意義なことに計画的に活用しているのである。新聞は朝食のときにさっと目をとおすだけにして、通勤の電車のなかでは、計画をたてるとか工夫をこらすといった創造的なことに打ちこむ、そして詳しく新聞を読むのは、頭の疲れた帰宅の電車のなかにする、といった工夫こそ、通勤時間を有効に使う効果的な方法である。

ビジネス書を読むのもいいですが、計画を立てるという頭の使い方が有効なんです。