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時計の時間と生活の時間

「現代人は時計の時間にしばられて、伸ぴたり縮んだりする生活の時間のことを忘れてはいないだろうか?」 

ある哲学者は現代人の時間の使い方に対してこのような疑問を投げかけているが、たしかにわれわれには、時計の時間のほかに「生活の時間」というものがある。 

好きなことをしているときや楽しんで遊んでいるときは、時間はあっという間に過ぎ去るが、面白くないときや苦しいときは時間のたつのがひとしお長く感じられる。物理的な時間には伸び縮みはないが、生活の時間に伸び縮みがあるのである。 

また、個人個人でちがう生理的時間や心理的時間というものもある。

子どものころは一日がとても長かったが、年をとるにつれて一日は短くなり、予定の仕事の半分もやりおえないうちに一日が過ぎてしまう。

これは、生活に追われることのない一日と、あくせくと働かなければならない相違から生まれる。

また、その人が生きている人生の時期の相違から生まれる心理的、生理的な時間感覚のちがいである。のんびりした性格の人の時間と気ぜわしい人の時間も、その心理的時間はたいへん異なっている。

生理的、心理的時間によって、時計の時間が長くもなり、短くもなるのである。